2025.10.24事例でわかるファブレス向けシステム|課題の可視化から導入効果まで
#業務システム

ファブレス経営の基本から課題7選、導入メリット、業態別の必須機能までを解説。
今後システム導入を検討しているご担当者様は、ぜひ参考にしてください。
いまさら聞けないファブレス経営とは?

ファブレス経営とは、自社で製造設備を持たず、企画・設計・販売といった上流工程に特化する経営モデルのことを指します。
製造そのものは外部の委託先に任せることで、設備投資や人員コストを抑えながら、商品開発や販売戦略にリソースを集中できるのが大きな特徴です。
このビジネスモデルは、電子機器、消費財、生活雑貨やアパレルなど、さまざまな業界で採用されています。
グローバル競争においても有効
例えばアパレルや日用品の分野では、流行や需要の変化に柔軟に対応するため、製造を外部に委託することは珍しくありません。
また、電子機器や装置を扱うメーカーでも近年ファブレス化が加速しており、増加傾向に。
半導体や電子部品の分野では、巨額の設備投資や生産リスクを避けつつ、研究開発や製品企画に注力できるため、スタートアップから大手企業まで幅広く導入が進んでいます。
このようにファブレス経営は、グローバル競争が激化する現代において、スピード感のある事業展開を可能にする重要な戦略のひとつとなっています。
【7選】ファブレス経営を行う企業が抱える課題
ファブレス経営は、製造設備を持たずに柔軟な事業展開を可能にする一方で、多くの企業が共通する課題に直面しています。
ここでは、代表的な7つの課題を整理します。
1. 情報共有・コミュニケーションの難しさ
製造を外部委託する場合、情報の伝達には、どうしてもタイムラグが発生しがちです。
メールやExcelといった手作業中心のやり取りでは、設計変更や仕様変更がスムーズに伝わらず、納期遅延や不良発生につながる恐れがあります。
特に、海外の委託先を抱える場合、言語や時差によるコミュニケーションコストも課題になっています。
2. 在庫・資材管理の不透明さ
「帳簿上の在庫と、実際の在庫が一致しない」とお困りのケースも珍しくありません。
その結果、発注ミスによる欠品や過剰在庫が発生し、余計なコストを生む要因となります。
さらに、自社と外注先の間で在庫状況を正しく共有できないと、サプライチェーン管理の効率が低下してしまうことも課題です。
3. 原価・収益管理の困難

外注費や物流費、為替の影響といったコストが見えにくく、正確な収益管理が難しいのもファブレスの特徴です。
特に貿易を伴う場合は、リードタイムが長期化することもしばしば。
需給管理やキャッシュフロー管理の難易度が難しくなることで、製品ごとの利益率や採算性を正しく把握できないリスクもあります。
4. 品質管理とトレーサビリティの課題
製造を委託することにより、自社で直接管理できない領域が増えます。
ロット単位での追跡が不十分な場合、不良が発生した際の原因究明が遅れ、顧客からの信頼を損なう恐れがあることも懸念点です。
また、品質規格や法規制への対応が遅れるリスクも存在します。
5. 生産能力・納期のコントロール不足
委託先の生産キャパシティをリアルタイムで把握できないと、正確な納期回答が困難になる可能性も。
さらに、サプライチェーンの仕様を厳密に管理しようとすればコストが高騰するリスクもあり、企業にとっては大きなジレンマです。
6. サプライチェーン依存リスク
特定の外注先に依存していると、製造停止や品質トラブルが発生した際の影響が大きくなります。
加えて、自然災害や地政学リスク、パンデミックといった外部要因によって供給網が途絶するリスクも軽視できません。
7. 人材・スキル不足

デジタル化や、システム導入を推進する人材が不足していることも、ファブレス経営を行う企業の課題です。
業務が属人化するとブラックボックス化が進み、業務継続性に不安を残します。
さらに、業務改善やIT活用をリードできる人材育成も急務となっています。
業態別に解説!求められるシステムの特徴とは
ここでは、代表的な5つの業態に分けて、必要とされるシステム機能を整理します。
1. 企画・開発主体の企業の場合
製品のライフサイクル全体を見据えた管理が欠かせません。
PLM(製品ライフサイクル管理)やBOM・図面・レシピ(処方)管理など、設計情報を一元的に扱える仕組みが重要です。
さらに、設計変更や仕様変更を外注先にリアルタイムで共有できる体制を整えることで、納期遅延や品質問題を未然に防ぎます。
2. 調達・購買主体の企業の場合
外注先とのやり取りを効率化するために、発注・納期管理機能は必須です。
また、外注先ごとの原価やリードタイムを可視化できれば、コスト管理やリスク分散につながることも。
さらに、為替や輸送コストを反映したシミュレーション機能を備えておくことで、変動要因の大きい国際取引にも柔軟に対応できます。
3. 営業主体の企業の場合

顧客対応を強化するには、需要予測と生産キャパシティのマッチングが欠かせません。
更には、納期回答を自動化する仕組みによって営業部門の信頼性を高め、ほかには見積もり作成の自動化を通じてスピード感のある提案も可能になります。
これらにより、営業活動の効率と顧客満足度の双方を、向上させることが可能です。
4. 品質保証主体の企業の場合
品質面でのリスクを抑えるために、トレーサビリティ機能が重視されます。
不具合情報を共有し、是正処置を管理できる仕組みを導入することで、迅速な問題解決が可能となります。
また、業界規格や認証に対応するための文書管理機能を備えることで、顧客や規制当局への対応力を強化できることも特徴です。
5. 経営・管理部門の場合
経営層にとっては、部門別や製品別に採算管理を行える仕組みが重要です。
外注コストや物流コストの分析を可視化することで、無駄のない経営判断が可能に。
加えて、リアルタイムダッシュボードで経営指標を把握できれば、スピード感を持った意思決定にもつながります。
「生産管理」「販売管理」、自社に必要なシステム機能範囲は?
業態別に求められる役割を紹介しましたが、共通する課題として「機能の過不足」が挙げられます。
ERPやパッケージシステムを比較する際、生産管理では機能が過剰すぎる一方で、販売管理では機能不足に陥りやすいことが課題です。
そのため、自社の業態や業務特性に合ったシステムを選定することが、最も重要なポイントと言えるでしょう。
ファブレスシステム導入のメリット

これまでに見てきたように、ファブレスを導入する企業は多くの課題を抱えています。
こうした課題を解決するための有効な手段が、ファブレス企業向けのシステム導入です。
導入によって得られる具体的なメリットは、以下のような要素と考えられます。
1. 情報共有の迅速化
・外注先とリアルタイムで、仕様変更や進捗の共有が可能に。
・コミュニケーションロスや、伝達ミスによる手戻りを削減。
2. 在庫・資材管理の最適化
・発注、在庫情報を一元化し、欠品や過剰在庫を防止。
・サプライチェーン全体での資材使用状況を可視化。
3. 原価・収益管理の強化
・製品ごとの利益率を、正確に把握。
・外注費、物流費を即座に反映し、迅速な経営判断を支援。
4. キャッシュコントロールの精度向上
・「何がどれくらい売れるか」を、高い精度で予測することが可能に。
・需要予測、売上管理と連動させることで、適切な軌道の修正が可能に。
5. 品質管理とトレーサビリティの向上
・製造履歴をシステム上で追跡。
・不具合発生時の原因究明が早まり、顧客対応力も向上。
6. 生産キャパシティと納期管理の精度向上
・外注先の生産能力や稼働状況をリアルタイムで把握。
・顧客に正確な納期回答が可能になり、信頼性の向上に。
7. サプライチェーンリスクの低減
・複数の外注先を、システム上で統合管理。
・依存リスクを分散し、柔軟な調達体制が構築可能に。
8. 調達コストの最適化
・調達の仕様、要件を一元的に管理し、過剰な仕様追加によるコスト高騰を防止。
・シミュレーション機能を用い、コストと品質のバランスを取りながら、最適な調達判断が可能に。
9. 経営管理・意思決定の迅速化
・ダッシュボードで経営指標を、リアルタイムに可視化。
・経営陣が即座に判断できる、スピード経営を実現。
ファブレス経営におすすめの3つのシステム
ここまで見てきたように、ファブレス経営には情報共有・在庫管理・原価管理など、複合的な課題が存在します。
そこで、これらの課題を解決し、業務の可視化と最適化を実現するための3つのシステムをご紹介します。担当者の方はぜひ参考にしてください。
1.セミオーダー開発型システム
「自社の業務に合う既製品がない」という企業に最適なのが、セミオーダー開発型のシステムです。
自社の業務フローや管理項目を柔軟にカスタマイズが可能。
導入スピードと独自性を両立できるのが特長です。
特に、ファブレスのように委託先ごとに異なる工程や仕様がある企業においては、標準機能にとらわれない「ちょうどいいシステム構築」が可能です。
フルスクラッチよりも短期間・低コストで導入でき、運用後も段階的な拡張が行える点も魅力と言えます。
こんな企業におすすめ:
・現行システムに合わない業務が多い
・標準パッケージでは柔軟性が足りない
・既存Excel運用から脱却したい
2.Progress-One販売管理
ファブレス経営には、「Progress-One販売管理」もおすすめです。
これはネクステップ・ソリューションズが独自開発した、業種テンプレート型のシステムで、特に外注管理・在庫・収益可視化の課題を抱える企業に強みを発揮します。
業種別テンプレートでスピード導入
ファブレス企業のベストプラクティスを反映したテンプレートを活用することで、標準化も行いながら、自社業務の強みに対しても高い適合度を実現します。
導入までのリードタイムを短縮し、早期運用を可能にします。
外注・在庫の一元管理
Progress-Oneでは、発注・仕入・在庫・原価をすべて同一基盤で管理できるため、外注先の生産進捗や在庫状況をリアルタイムに可視化させる構成も可能。
委託先の変更や急な需要変動にも、柔軟に対応できる仕組みを整えています。
ファブレス経営のリアルに即した仕組み
多くのファブレス経営企業が抱える、「在庫の不透明さ」や「原価把握の遅れ」など、現場で起きている課題を解消するための機能が充実しています。
外注費や物流費、為替などのコストを反映した収益シミュレーションをアドオンしたケースもあり、キャッシュコントロールや利益管理を見える化するニーズにもお応えできます。
こんな企業におすすめ:
・ファブレスで外注比率が高い
・収益・在庫・納期の可視化を強化したい
・管理部門と現場の連携をスムーズにしたい
3.Empower-X
Empower-Xは、クラウドベースでも利用できる統合型の生産管理・販売管理システムです。
複数拠点や多様な委託先、グローバルなサプライチェーンを持つ企業でも、シンプルなUIで運用できる特長を持っています。
リアルタイムでのデータ共有やオプションのダッシュボードも備え、経営・管理・現場の連携を強化。
クラウド対応も可能で、導入・保守の負担を抑えながら、スピーディな拡張も可能です。
こんな企業におすすめ:
・システムをシンプル化したい
・標準化とコア業務の強化を両立したい
・クラウドで導入したい
・海外拠点でも使いたい
・拠点間での情報共有や外注先の管理を強化したい
など
テキストの説明だけでは、わかりづらい部分もあると思います。
まずは要件整理からサポートさせていただくことが可能ですので、システムを検討されている方は下記からご相談お待ちしております。
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どんな成果があった?導入事例3選を紹介
実際にシステムを導入した企業には、どのような変化があったのでしょうか?
ここでは、ファブレス経営を行う企業の事例を、業態別にご紹介します。
事例①:工業用工具メーカー
・背景と課題
A社は、工業用工具のファブレスメーカーです。
製造は外部委託し、自社では企画や販売に注力していましたが、情報共有や在庫管理に課題を抱えていました。
具体的には、引合情報から製造・販売・需要・在庫までを一元的に管理できず、納期回答や出荷指示をFAXやメールに依存していたため、レスポンスの遅れや手作業によるミスが発生していました。
・導入内容と成果
そこで弊社のシステムを導入し、販売管理・在庫管理・輸出業務を単一のデータベース上で統合しました。
商品構成マスタを活用して出荷時に必要な部品を在庫から自動引当できるようになり、在庫推移表での確認も容易になりました。
さらに、納期回答や出荷指示もワンクリックで処理できるようになり、在宅勤務でも利用可能となった点も大きな効果です。
その結果、業務効率の大幅改善と納期精度の向上、情報伝達のスピードアップを実現。
シンプルな販売・輸出管理体制を確立し、外注先との連携力を強化することで、ファブレス経営の安定性を高めることができました。

事例②:照明機器メーカー
・背景と課題
B社は照明機器メーカーです。
特注品や準特注品が多く、受注から出荷・債権回収までの業務を効率的に管理することが大きな課題でした。
従来導入していたERPパッケージでは、標準化を目指し導入運用していましたが、市場ニーズの変化や自社の方針の変化に対応ができず、また業務上の問題(非効率や進捗/データが見えない)、そしてシステム基盤の老朽化によりシステム刷新を検討していました。
・導入内容と成果
システム導入後は、受注から出荷・回収までを一元管理。
さらに、直近9か月の売上実績に基づいて発注数を自動計算する仕組みを構築しました。
これにより、従来の「受注に基づく所要量計算」のみでは対応しきれなかった変動の大きいビジネスに対応することが可能に。
また、システムのシンプル化・機能数削減により、余分なコストを抑制。
セミオーダー開発の強みを最大限に活かし、運用効率の改善とコスト削減の両立を実現しました。
さらに、在庫不足や図面変更時の情報漏れといったリスクもアラート機能で早期に発見できるようになり、品質と納期の安定性も高めることに成功しています。

事例③:農産品の輸入・加工を行う商社・メーカー
・背景と課題
C社は、農産加工品を扱う農産品の輸入・加工を行う商社・メーカーです。
従来は複数のシステムが分散しており、重複入力やデータ不整合、ミスによる判断の遅れが大きな課題となっていました。
特に、海外の原料調達から加工・通関・出荷に至るまでの進捗や原価などのデータが散在し、経営判断に必要な情報をリアルタイムに把握することが難しい状況でした。
・導入内容と成果
統合システムの導入を行ったことにより、購買・在庫・販売・会計を含む業務を一元管理。
さらに、原価をLOT単位で捉えられる仕組みによって、輸入の諸掛や経費も含めた精緻なコスト把握が可能になりました。
加えて、財務会計までを通貫させたことで、経営層が迅速かつ正確な意思決定を行える基盤を確立しています。
結果として、モノの流れとキャッシュの流れを同時に可視化できるようになり、業務の効率化とともに国際取引における競争力を大幅に強化することができました。

上記でご紹介した事例は、これまで弊社がお手伝いをさせていただいた中のごく一部です。
他に近しい導入事例をお探しの方は、まずはお気軽にお問い合わせください。
何から検討するのがいい?
「ファブレス経営におけるシステム」と検討とひとことで言っても、お悩みの幅はとても広く、どのシステムを選ぶか、決め手を欠いている方も多いのではないでしょうか。
そのような場合はまず最初に、現状業務の流れを整理して可視化することをおすすめしています。
しかし、この「棚卸し作業」も、自社で行うのは難しいという場合は、弊社のSORD(ソード)というシステム企画・構想支援サービスをご活用ください。
SORDは、検討段階のお客様を伴走体制でサポートするサービスです。
支援期間、役割分担、ゴール設定イメージなどを、予算や納期に合わせて柔軟にご提案することが可能です。
「何から考えればいいかわからない」
とお悩みの方は、構想段階から、ぜひお手伝いをさせてください。
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